略して「鯛ラバ!?」

現在、大流行中の鯛ラバ。フラフラ、鯛カブラ、ゴムカブラなどいろいろな呼び名があるが、「鯛のラバージギング」を略して「鯛ラバ」が一番知られているこの釣りの名前だろうか。

2005年、鳴門の鯛をメタルジグで釣ってやろうと出かけた時に、現場の釣具屋さんでこのゴムカブラに出会った。鉛の玉オモリの後ろに糸ゴムとネクタイの形をした板ゴム、それに二本の鈎が付いただけの不恰好な疑似餌だった。第一印象は、こんなもので鯛が釣れる訳がないと思った。

しかし、なんとなく興味があったので一つだけ買って港へ向かった。その日のジギングはイワシなどのベイトが少なく、ジグで鯛を釣るのは難しい状況。そこでゴムカブラを思い出して試してみたところ幸運にも鯛が釣れてしまった。この釣行が鯛ラバへの第一歩となった。「これはおもしろい!」と思い、シャウト!の鯛ラバ「アンサー」の開発が始まった。

鳴門を中心に全国へ広まった和製疑似餌を現地ではゴムカブラと呼び、船を流しながらビシマ糸で手釣りをして漁をする。元々、カブラといえばオモリの直下に鈎を付けた漁具だ。最もシンプルな漁具として全国に様々な形や大きさで存在する。カツオを追う漁師達により伝えられたとされ、北は青森から南は九州、沖縄までカブラは漁師達に手を加えられて進化し各地で独特な発達をした。

昔、カブラで鯛を狙う漁師たちは海老などの餌をカブラに付けて漁をしていた。ところがいつも餌が確保できる訳ではない。ゴムカブラはそんな漁師達が海草を餌代わりに付けて泳がせたのが始まりと聞いた。漁師達はビシマ仕掛けにゴムカブラを付けて、ボトム付近を横向きにトレースする。

真鯛の泳層を狙って横向きにトレースする訳だが、これを我々アングラーが船からロッドとリールでやろうとすると無理がある。漁師たちはその根の鯛の釣れる潮流に合わせて目印を付けたビシマ仕掛けを入れる。自分の漁場だけに、ビシマ糸の長さ、仕掛けの長さ、船の流す向きなどを経験から習得しているので釣果に結びつく。鯛ラバで真鯛をキャッチするテクニックを習得しよう。




真鯛の生態について

真鯛は水深30m〜150mの沿岸水域で潮通しが良く、岩礁などの起伏が多い場所が好きだ。鯛ラバをやる水深は30m〜80m位までだろうか。これは先に述べた餌となるゴカイ類の多くが生息している水深と重複している。冬の最低水温は8℃以上である事が条件になる。8℃以下の水温では餌を食わなくなり平衡を失う。この水温から急激に2度でも下がると致死限界に達して浮き袋が異常にふくらみ水面に腹を浮かせる「浮き鯛」現象が起こる。

過去に瀬戸内海の浅い海で大寒波が来た時にこのような現象が見られたとの事。ゴムカブラでの釣りシーズンは4月から11月くらいまでで、これも餌のゴカイ類などが活発に泳ぎ回る時期と重複している。オフシーズンの12月から3月は釣れなくはないが活性が低い。非常にアタリが小さくシビアで繊細な感性が必要になるが、それだけに釣った時の喜びは大きい。産卵は日照時間ではなく水温による影響が大きく14〜15℃で産卵を開始する。18℃以上で特に食欲旺盛となり活発に泳ぎ回る。

真鯛は雌雄同体の魚で小さい時はほとんどが雌。大きい個体ほど雄になる雌性先熟型の魚だ。春ののっこみの時期は冬に深場で消耗した体力と産卵の準備のため非常に活発に餌を追う。産卵後は釣れない時期があるが、これは産卵で体力を消耗したためで、産卵に参加できるような成熟した35cmより大きい真鯛が釣れない。

この時期は産卵に関係ない小さい真鯛が活発でゴムカブラにもよく反応する。鯛ラバは大鯛ほど一気に掛かってしまう事が多く、逆に小鯛ほどアタリがあるものの掛からない場合が多い。真鯛の脳の発達具合を他の魚と比較すると視葉がよく発達し視覚主導型の習性が強いものの、臭覚もよく発達しており臭覚に頼る面も多い事を物語っている。真鯛は他の魚と同じように、色の判別は出来ないと言われている魚だ。

網膜の構造と機能から色盲と言われているが、これには釣り人としては疑問が残る。船上ではヘッドやゴムのカラーで釣果に差が発生するのだ。カラーの使い分けとしてはピンクゴールド、レッドゴールド、オレンジスケールなどはゴカイ類などの虫餌系、ブラックゴールド、レッドスケール、ブラックスケールは海老や蟹などの甲殻類を多く捕食している時にお勧めのカラーだ。

これは僕が実際に釣った鯛の胃袋から出てきた餌を参考にしている。ネクタイゴムのカラーはオレンジがどんな状況でも無難に対応できるカラーだ。プランクトンの多い濁った潮ではチャートリュースで、逆に澄んだ潮ではレッドが効果的だ。真鯛は色を判別していないかもしれないが、カラーによってこのような差が生まれるのは、おそらく色の明暗を識別していると考えられる。「海老で鯛を釣る。」という諺があるが、実際に真鯛は海老などの甲殻類を好んで捕食している。

これにゴカイ類や貝類を含めた底生動物を主食にしている。黒鯛のように海草や人家の残飯まで食べていた例はないが、真鯛の腸からは炭水化物の消化に関わる消化酵素が検出されており、肉食魚と思われがちな真鯛だが雑食性の傾向があると言える。






ラインについて

「鯛ラバ」の釣りを成立させるためには、漁師達が行っている漁を参考にタックルを工夫する必要がある。ドテラ流しの漁師船ではなく遊漁船ではスパンカーを立てて潮に同調させて船を流す。横の釣りではなくバーチカルジギングと同様の縦の釣りだ。その日、その根の鯛の遊泳層が分からない我々には縦に探るほうがチャンスが増える。やり始めたころはライトジギング用のベイトタックルにPE1.5号で試したが潮が速い時に軽いカブラではラインが潮に負けて底が取れない。底を取るためにどんどん大きく重いカブラを使うようになったが、比例してヒットが少なく、掛かっても外れてしまうような浅い掛かり方が増えた。逆に鉛のヘッドは出来るだけ小さく軽い方がよくアタリがあった。この経験から、小さく軽いヘッドでも潮切りがよく底の取れるようにPE0.8号を使うようになった。これだけ細いPEだと大鯛が掛かるとかなり慎重にやり取りしないと切れてしまう。ラインの細さはドラグと腕でカバーする。PEのマーキングは絶対にメーター毎に印のあるものを選ぶべきだ。潮の流れる荒い根で軽いカブラを使って底を取るには、水中に吸い込まれていくラインの変化を見ないと着底を見逃してしまう。リーダーはフロロの3〜4号、3〜4mをライトボビンノッターを使いPRノットで結束する。細いPEはリーダーと結束した場合に強度が不安だがPRノットであれば結束による強度の低下は起こらない。



ロッドの開発

ラインだけでなくアンサーのプロトタイプをテストに行く度に使用するタックルも進化していった。アンサーの開発にも悩んだが、使用するロッドにも同じように悩んだ。とにかくアタリがあってもフックアップしない。初めてこの釣りに挑戦した人は想像よりも金属的な真鯛のアタリに驚き、しかもフッキングしない事に再度驚く。電撃フッキングではスッポ抜けが多発するので、すぐにフッキングしてはいけない。

アタリがあってもリーリングスピードを変えずに巻き続け、十分に鯛の重さがロッドに乗ってからフッキングする。この駆け引きが鯛ラバの醍醐味であり難しいところだ。船上の仲間たちからは何ともいえない呻き声が聞こえる。「うわ!」「あ!」フッキングに至らなかった時に上げる声は人それぞれだ。鳴門に通い始めた頃はフッキングさせるためにアンサーシャフトのプロトタイプはどんどん柔らかく曲がるブランクでテストするようになっていった。

鯛のバイトに対して違和感を与えず、ティップからバットまで、どこまでも追従するような胴調子のロッドが良いのではと考えたからだ。一度は餌釣り用のグラスブランクのロッドもテストしてみたが、良く掛かるようになるどころか逆にどこまでも曲がってしまいフッキングのタイミングが分かりにくいロッドだった。この経験から始めはガツガツとした前アタリに弾いてしまうと考えていた反発力の強いロッドが、実は掛ける事が出来るロッドという事が分かった。

ただ極端に硬いだけのロッドは波のアップダウンや大鯛の引きに対しタメが効かないので良くない。鯛ラバ専用に開発したアンサーシャフトは、最適なテーパーのブランクで理想的なベントカーブをみせる。掛けるための反発力を残しつつ、ある程度は曲がるティップとフッキングに持ち込むためにベリーからバットにしっかりしたパワーのあるロッドに仕上がったと思う。アンサーシャフトでもう一つこだわった特徴がフォアグリップをなくしてしまった事だ。

これはリーリング中にリールをパーミングした状態でブランクを人差し指で触れる構造で、鯛の微妙なアタリも感じ取る事ができる。しかも指の触れる部分はとことん敏感に仕上げたかったので無塗装とした。フォアグリップにEVAを付けたロッドでは感じとる事が出来ない変化を感じ取る事で集中してリーリングを続ける事ができる。





フッキングについて

鯛ラバの釣りは他の釣り以上にロッドによって釣果の変わる釣りではないだろうか。その日、その時間でフッキングで出来るロッドと出来ないロッドがあるなといつも感じる。船に持ち込めるロッドには限りがあり活性の高さであれやこれやとロッドを換えるのはリールが変わったりして逆に釣果に悪い影響がある事が多い。

そこで実際に僕がやっているのはロッドの硬さの調節をロッドではなくラインとロッドの保持角度でフォローするテクニックだ。基本的にジギングをさせてくれる船はスパンカーでラインが垂直になるように船を潮に乗せて流してくれる。ラインが垂直に水中に入っている時のロッドの保持角度を90度にした場合はティップの曲がりを最大限に使った状態といえる。逆に水面にティップを突き刺し一直線180度でリーリングした場合はロッドの性能はまったく関係がなくなり超高弾性のロッドを使うのと同じことになる。

その時の活性や使っているロッドの硬さによってこの角度を変化させる事によりロッドのポテンシャル以上の機能を発揮させる。例えば活性が高くてアタリが激しくしっかり食い込んでくる時は高弾性の硬いロッドの方がフッキングしやすい。だが大鯛がヒットした場合にはロッドが曲がらずキャッチまでがバラシやすく苦労する事になる。

ところがバラシの少ない柔らかいロッドではフックアップに至らない事になってしまう。そこで前述のテクニックを使うのだ。ティップを水面に下ろした状態で保持してリーリングをする事でティップの食い込み幅を抑えて高弾性のロッドを使うのと同じ状態を作り出す。
このテクニックは垂直にラインが入っている事を前提に話をしたが、もちろんそんな状況はよほど上手な船長でなければありえない。

ほとんどの場合が船の下や左右など斜めにラインが入ってしまう事の方が多いのではないだろうか。何が言いたいかというと重要なのはロッドの保持角度とラインの角度が問題であり、船の下にラインが入っている時にいくらロッドを垂直に水面へ保持しても一直線の180度にはなっていないという事を考えてほしいのだ。

逆に言えばラインが右へ行っても下に入ってもロッドを持つ角度が変わらない人はロッドを使いこなしているとは言えない。




リーリングについて

鯛ラバでよく釣るアングラーほどリーリング中は隣の人と話をしたりしない。黙ってロッドティップを見つめながらハンドルを回す。

これは何故かと言うと、ハンドルを回す数をカウントしているのだ。自分の使っているリールがハンドルを1回転させると何センチ巻けるのかを調べておいて、底から何メーターまでカブラを巻き上げたかを把握しながら釣りをする。鯛ラバにはハンドル1回転あたり約55〜60センチ巻き取れる回転性能のよいバス用のリールが使いやすい。

底からどの位のところでアタリが多いかを探るために数を数えている人と、いい加減に上下させている人では釣果に差が出る。リールはギア比の高いモデルもあるが、ギア比5:1くらいのローギアの方がトルクがあるので巻きやすい。ギア比が7:1となるとトルクがないので巻く時にハンドルを重く感じる。

これではリールをパーミングする手もハンドルを握る手にも余計な力がかかってしまい安定してリーリングすることが出来ない。リーリング中にロッドティップが余計な動きをするのはカブラのヘッドが不規則に動いてしまうので良くない。

リーリングスピードは上記の巻き取りスピード55センチのリールで、普通は1秒間にハンドル1.5回転ぐらい。1秒間に速い時で2回転、遅い時は0.5回転ぐらいで巻いて、その日の最適なスピードを探る。鯛ラバをやっているとほとんどの場合、底から20mまで巻き上げる間にアタリがある。

ボトムにアタリが集中する時は10回しかハンドルを巻かない事もある。イワシなどの餌を追って中層よりも上でヒットする事もあるが、そんな場合は稀だ。これはゴムカブラが疑似餌として何を擬似しているかに起因している。






フックについて

前述したようにフッキングの難しい鯛ラバだが、ゴムカブラにセットされたフックの種類とセッティングもフッキングさせるためには重要な部分だ。青物と違って真鯛は捕食の時に口内へ吸い込む事のできる水量が少ないので、できるだけ軽いフックを使う事が重要だ。

しかしながら、それには問題点がある。軽いフックは裏を返せば細く小さいフックである。すなわち、細く小さなフックを使えば掛かる可能性が増えるのと同時に伸ばされて逃がす危険性が増す。やわらかく柔軟なラインを使えば掛かりやすくなる一方でリーダーやスカートに絡みやすくなる。

アンサーはフッキングを最優先に考えてチヌ鈎を通常のセッティングとした。チヌ鈎だけに無理は出来ないがフッキング性能は最高だ。近海のほとんどの海域を僕の場合はPE0.8号のタックルで鯛ラバをやり通す。チヌ鈎の強度は太軸のマダイ鈎や伊勢尼に比べて弱いがタックルとのトータルバランスとしてはチヌ鈎でフッキング率を優先した方が良いと思う。

鈎を太く大きくすればするほど強度が上がるかわりに重くて刺さりにくくなるのでフッキング率が下がる。しかしながら、フッキング率が下がっても大鯛の可能性の高い海域などでは太軸のモデルが必要とのユーザーの声もあり、伊勢尼鈎を使ったものをスペアーフックとして発売している。

フックとヘッドを繋ぐラインにはアンサーはPEを使用した。何故かというとPEは柔らかくてしなやかなので吸い込まれやすいからだ。しかし、これにも問題点がある。リーダーやボディーに絡みやすくなるのだ。最近はいろいろなゴムカブラが販売されているが、その中にはラインに硬くて張りのある素材を使用しているものもある。

これは絡みにくくするのが目的だ。アンサーは絡みやすいPEを使う代わりに、絡まないようにするための別の方法をとった。フックがリーダーへ絡むのは特にフォール中にヘッドから出ているフックとリーダーの距離が近いからで、アンサーはチューブを使用してその距離を離す方法で絡みを防いでいる。

鯛ラバは底を頻繁に探る釣りなので鈎先が非常に痛みやすい釣りだ。そこでアンサーはフックを簡単に脱着できる構造にした。アンサーに取り付けられたチューブは一見すると単にフックを固定する役割だけのように見えるが、それだけではなくフックをチューブによってリーダーから遠ざける仕組みでフォール中に絡むのを防いでいる事に気が付く人は少ないだろう。



アンサーの形状

ゴムカブラは大きなヘッドがあるので全体像として蛸のように見えるが、実はゴカイやイソメなどの虫餌をイミテートした疑似餌なのだ。すなわち、それらが生息し泳ぎ回っている層がボトム付近なのでゴムカブラのヒットゾーンも同じと言う訳だ。

水中を泳がせてみると、ヘッドに水流を受けて後ろに発生する反転流でユラユラと泳ぐ。ゴム板がユラユラする様は水中を泳ぐゴカイなどの虫餌に見える。先に安定したリーリングの必要性を述べたが、ヘッドが不規則に動いてしまうと反転流がうまく使えずゴムはゴカイのように泳がない。

ゴムカブラのヘッドは反転流を起こすためと、沈めるためのオモリの役割をしているものの、ゴカイなどの虫に似せて見せるためにはヘッドはない方が良い。これが小さいヘッドの方がアタリが多い理由だ。アンサーの場合はゴムの薄さとS字アクションが特徴だ。天然ゴム製のネクタイゴムは薄さ0.25mmで非常に薄い。

デッドスローでもわずかな水流の変化を捉えてユラユラと泳ぐ。シリコン製ではなく天然ゴム製にした理由は強度だ。シリコン製のネクタイゴムは確かに薄くてよく泳ぐ。

しかし、シリコン製はフグなどの歯のある魚に対しては著しく弱いので強度に勝っている天然ゴムを採用した。ヘッドは左右から球を潰したような形状だが、これがヘッドを左右に振りながら泳ぐS字形アクションを発生させる。

この動きは、視認できる程度の水中で実際に横引きしてみると良く分かる。実際には横引きではなくバーチカルに巻き寄せてくるので、横引きほどの大きなアクションは発生しない。しかし、真鯛はこの微妙なアクションに通常の球形ヘッドよりも良い反応をする。